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電動車いすで海外旅行 4 チェックイン

ソウルの福祉事情。スロープ付き介護タクシーに乗れるか?[電動車いす海外旅行]の続きです。何かヒントになって「行ってみよう」と旅の計画の一助になれば嬉しいです。

ソウル旅行の最難関  車の乗降

二00五年からソウルに行くときは、アシアナ航空のビジネス座席で幾度となく訪韓してきた。そのソウル旅行で一番苦労するのは、ソウル市内で移動に使うワゴン車の乗り降りだった。

歩行できない、関節が硬直、そんな私の身体を手助けで見知らぬ人に持たれるとアイタっと叫ぶほどの状態。二人がかりで私の身体を抱えるため、足腰がしかりした慣れたヘルパー同行が旅行の必須条件だった。


それが、ソウル冬季オリンピックあたりでバリアフリー改善されたのだろうか、スロープ車を利用できるようになったのだ。嬉しい!という言葉では足りないほど感動した。

「やっと、やっと気楽に車に乗れる!」

日本で普通に利用できることが海外では違う、といったことは多くあるけれど、スロープ介護タクシーが気軽に利用できるかどうかは電動車いす利用者にとって大事なこと。海外旅行を躊躇させる主な理由だろう。
二000年から介護保険制度が始まった日本では、介護タクシーは観光客でもお金を払えば利用できる。貸し切りだって可能なのに対して、韓国はそうはいかない。
ソウルにも公共のスロープ介護タクシーはあるにはあるが・・・

・二時間前に電話予約
・韓国語で予約する
・時間は指定できない

と、海外観光客が利用するにはハードルが高すぎるのだ。時間が不確かなことが一番の難点。私はこれまで一度だけ韓国人の友人に助けを借りて利用したが、自分たちの旅行では使えないと思った。

ソウルで電動車いすのまま車に乗れるなんて!もうアンビリバボー。目の前にある車からスロープが出ているのが信じられない。嬉しすぎて涙が出た。これまで一つ間違えば私もヘルパーさんも大怪我をする方法で移乗するしかなく、韓国のドライバー、ガイド、ヘルパー、皆さんに苦労かけてきたことが思い出されるのだ。

イケメン俳優チョ・インソン氏のファンミーティングや映画鑑賞で頻繁に訪韓旅行していた頃、私を抱えてワゴン車に乗せるヘルパ―さん達はどんなに大変だっただろう。スロープ車があればラクなのに・・・とみんな思っていたはず。当時を思い出すと、感謝の気持ちが今も沸き上がる。それほど苦労をかけてきたのだ。

とにかく、電動車いすでソウル旅行で一番困った移動と車の乗降が気軽になったことは、のどのつかえがとれたも同然。
「これからは、気軽にソウル旅行ができるね!」
晴れ晴れとした気持ちになった。
ところが、一難去ってまた一難。
新たに予期しない困難と苦痛が待ち構えていたのだ。

飛行機内での着席姿勢がトラウマとなる

アシアナ航空に限らず、航空機に搭乗した場合、離発着の時は背もたれを直して足元に荷物は置いてはいけない。これは航空機事故の際、荷物が通路をふさいだりケガの原因になるからだ。九十秒で緊急脱出できること、となっている。

これまで、膝が曲がらない私の左脚が座席からまっすぐのびて床に着かないため、かかとの下にエアクッションや柔らかいものを置かせてもらっていた。座位の姿勢が保持できるよう足置き場が必要で、危険物にならない柔らかなものを置いていた。

それが二年前の搭乗時・・・
客室乗務員から「(床に)何も置いてはいけません。離陸後まで我慢してください。」とマニュアル遵守の案内になり、ひざ掛けもクッションも頭上にしまわれた。帰着便も同じだった。

従って足元には何も置かず、ベルトサインが消えるまで耐えて耐えて、発狂しそうだったが耐えるしかなかった。
アシアナ航空の機内安全のため、おっしゃることは御もっともなことで、これまでがラッキーだったんだと思うしかなかった。

椅子に座って両足を床に付けない姿勢で、二十分以上アナタはどれだけ我慢できる?と問いたくなったが・・・健常者でも両脚を少し浮かせて座位を継続でするのはハードだと思う。私は筋トレはしてないが腹筋と背筋はあるほう。それでも私のお腹も太股の筋肉もブルブル震え始め、飛行機がターミナルから離れてゆっくり滑走路を回わる前に、生汗が出て失神しそうなった。そして思った。

「もうソウル旅行はムリだ」
「韓国にも海外旅行もできないわ」

これまでどんな難関も諦めず、へこたれないチャレンジ精神で解決してきたつもりだ。しかし、この変えられない機内規則だけはどうにもならない。気持ちがくじけて、夕暮れ後の暗やみのなか、遠く離れていくインチョン空港ターミナルに「さようなら」をした。
私の中でソウルも遠くなった。

それから二年

炎のファイター、お馴染みの 猪木リング前応援歌、BON-BA-YE〜♪のエレクトーンが聞こえる。(笑)脳内スピーカ音量もMaxになって、私は軽快なリズムに乗れるようになっていた。

一度はへこたれてしまった電動車いすで海外旅行♪だが、機内での恐怖心を押し殺す方法をみつけた。つまりこういうことだ…もう自力では無理かも…と思ったなら、他人に他力マジカル頭脳パワーを期待するのもいいじゃないか。発想と方法をチェンジすることにした。

恐怖心をなくすため隣に座ってもらう「精神的なお守り」役、助っ人メンバーを加えればいいんだ! 機内の足元トラウマは、一か八か最強布陣で臨んでかけてみよう。(隣にナナさんがいると足元のことは何も言われないかも)秋のソウルに再び旅行することにした。

今回、ソウル旅行に同行してもらったナナさんは、国際線CAを定年退職まで勤めあげたすごい女性だ。退職してから随分経ってるからとおっしゃりながらも、私たちが福岡空港に着いて、アシアナ航空のチェックインカウンターに行くやいなや、スタッフとやり取りが始まって本領発揮。


一般の旅客旅客なら、荷物のX線検査の後、ビジネスのカウンターに行けば、そんなに時間はかからないと思うが、電動車いす旅行の場合は、バッテリー問題が重要で、サブバッテリーも含めどんな種類のものが、どこについているか、いくつあるか、細かく聞かれるのでチェックインに時間がかかる。
チェックインがいつもよりスムーズに進み、私たちはずいぶん助かった。

ドライバッテリー
リチウムイオン電池・バッテリーは、航空機の場合は特に危険があるため搭載制限がある。携帯やパソコン、今や多くの機器がリチウムバッテリーや電池となっているにもかかわらず、飛行機に乗る乗客は自分が犯しそうなミスに気づき難い。貨物コンテナに入れる荷物に簡単に入れてはいけないのだ。
また、電動車いすをどのような措置をして飛行機に貨物で載せるかという事まで、国際規定がある。私も電動車いすの配線接続を同行ヘルパーさんに外してもらって、貨物コンテナー内で作動しないよう必ず電動を完全オフにする。

私の電動車いすは、ドライバッテリーなので全く問題はない。しかし航空会社のスタッフがマニュアル通りに把握して業務を遂行したいと言うのも理解できるため、さっきほかの人に聞かれたんだけど、、、と思う重複質問でも気持ちよく答えるようにしている。

危険物はチェックイン荷物で
私たちがチェックイン手荷物を預ける個数は五個。
エアマットセットやバッテリー充電器、補助マットなど重さもあるバッグ。機内へ持ち込めない液体やフォークナイフも忘れずにチェックイン。
旅慣れて大丈夫だと思うモノが、出国前のセキュリティで引っかかって時間をロスしてしまうこともある。日本も韓国もテロ対策は情勢次第で生き物のように変わると痛感する事件が帰国時に起こったが、福岡では無事に出国通過できた。

座席のこと
ビジネスクラスの最前列の窓際を私はネットか電話で予約する。隣に同行者が座るのが理想的な座席配置。最前列の私の隣は、赤ちゃんをカゴに乗せて取り付けることができる座席なのだが、幸い当日は赤ちゃんがいなかったらしく、お隣の席が空き、ナナさんに座ってもらうことに決めていた。もう一人は通路を挟んで反対側の座席となった。


ビジネスクラスは、キャンセルや変更手数料がかからないこともあって、当日の客況が変わりやすい。チェックインカウンターに早く行けば行くほど、希望の座席が取れることがある。予約で希望どおりの席がとれない、また同行者にそばにいて欲しい場合、早めのチェックインがオススメ。

今回は、元客室乗務員のナナさんもいて、全てうまくいきそうだなぁと喜んでいたら、私に歩み寄ったナナさんが落ち着いた小声で

「りえちゃん、ゲート、沖止めなんだって」
「うそ!! ウソ ウソと言って!」

「ダダダダーン」と響き渡る音が聞こえ、ベートーヴェン  交響曲 第5番 ハ短調「運命」♪「沖止め」という強烈なパンチを食らって卒倒しかけたが、運命の扉は開いてしまった。
私がいちばん避けたいことが「沖止め」ボーディング。これまでソウルと、ナナさんと行った釜山で二度経験したことがある。もう飛行機には乗りたくないと思った、その沖止めの搭乗だが、今回もナナさんが偶然居合わせていたことがせめてもの救い。

 

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このビジネスコンテストに応募した理由は、深刻化する介護問題に対し、具体的かつ実行可能な解決策を提案したいという強い動機からです。長年介護を受け、認知症の母親のダブル介護、介護難民の一歩手前に立たされた経験、そして介護現場で働くヘルパーの方々が直面するストレスや離職問題、在宅訪問介護サービスの提供会社の減少という現実を今、まさに体感中です。これらの経験から、10年後の介護の未来に対する深刻な懸念と、救済されない人たちへの正義感が、私の行動を促しました。

今のままでは、全ての介護が必要な人々の約1/3が、自らの希望通りに在宅での生活を送ること、また施設への入所が困難になると予想しています。この危機的状況に対処するため、「ファミリーケアナビ」という新規事業を立ち上げる必要があると考えました。遠隔介護マネジメントプランを提案し、早期の準備と家族全員でのケアプラン作成を社会に実装する必要性を感じています。
このビジネスコンテストを通じて、このプランが社会的課題に対する具体的かつ実行可能な解決策として認識され、一歩一歩実現に向けて進むことを願っています。

弊社のビジョンは、介護を必要とするすべての人が、住み慣れたわが家で長く尊厳を持って生活できる社会の構築です。

ビジネスコンテストファイナリスト5名に選ばれ最終審査へ

株式会社LITAプロデュース I'meビジネスコンテスト2024は、一時審査、二次審査、そして2024年3月20日(水)Potential Bloomingをテーマにしたビジネスコンテストの最終審査が東京御茶ノ水で行われました。ファイナリスト5名は、それぞれが直面し、苦悩した経験をもとに、社会が抱える課題をビジネスでどうやって解決し、社会を変えていくか、100名の参加者の中発表を行いました。

弊社代表はオンラインで発表させていただき、タイトル概要は以下の通りです。

プランタイトル
「離れていてもできる遠隔介護 ファミリーケアナビ 」
プラン概要
「遠隔介護マネジメントを核とした家族主導の計画と情報共有で、どこにいても介護参加を実現し、未来のケアと幸せを共に創る」

▼開催日時
3月20日(祝・水)13:00〜16:30(12:30 開場)

▼会場・アクセス
東京都千代田区神田駿河台4-2-5
御茶ノ水NKビル(トライエッジ御茶ノ水)11階

▼審査員

**株式会社エアークローゼット
代表取締役社長 兼 CEO 天沼聰様
**freee株式会社
起業時代統括マネージャー 磯貝美紀 様
**障がい者みらい創造センター
理事長 竹内亜沙美様
**相模女子大学大学院
社会起業研究科教授 金森剛様
**一般社団法人まちはチームだ / 株式会社HOA
代表理事 代表取締役 岡秀樹様

多くのフィードバックを直接審査員の皆様からいただく幸運に恵まれました。

エレキが目指す介護の未来と社会

私たちが解決したいのは、高齢者や障害者が直面する介護の課題です。日本の高齢者人口が今後30%から40%に増加する中、介護は社会全体の重要な問題となります。私たちの目標は、遠隔介護メソッドを普及させ、誰もが自分の人生と仕事を大切にしながら介護に取り組める社会を実現することです。このビジョンを達成することで、すべての人が尊厳を持ち、自立した生活を送ることができる社会を築きたいと考えています。

その根底にあるのは、介護に関わる全員が直面する多層的・多面的な課題です。家族だけでなく、給与が低くストレスが多いヘルパー、そして、問い合わせ相談の質問に対応しきれない行政の窓口も含まれます。

高齢化が進む中で、介護が必要になった際に処理しきれない状況を予測しています。介護は、今後予防的な方向性を模索し前倒しなければ、社会保障費の増大や利用者の負担額の上昇が避けられません。私たちが考える解決策は、早期から家族がチームとなり、経済的資源を活用しつつ、本人の意志を尊重したケアプランを立てることです。現在、親子間や医師との情報交換がうまくいかず、ステレオタイプな介護が行われがちです。しかし、介護保険制度だけに依存するのではなく、さまざまなサービスを上手に活用することが重要で、介護保険が全てをカバーしないという認識を持つ必要があります。どういうことかと言いますと、多くの人が介護保険制度が万能であると誤解していますが、実際には多くの制約があり、その制度だけでは十分なサポートがうけられません。

これらの認識から、私たちは家族が自ら情報を整理し、プロジェクトマネジメントと逆算思考で理想の介護に近づける計画を立てることが解決策だと考えています。介護は、単にケアを提供するだけではなく、ウェルビーイング、すなわち元気でいることも重要視する必要があり、セットで同時に行います。

このビジョンを達成するためには、介護に対する社会全体の意識改革が必要です。

私たちは、「介護=重い負担」という既存のイメージを変え、「先手必勝」「マネジメント」としての介護を普及させることで、すべての人が尊厳を持って、自立した生活を送ることができる社会を目指しています。

最優秀賞の受賞の喜びを社会実装に向けた力に

ファイナリストの皆様の授業プランとピッチがとても素晴らしく、どなたが受賞しても良いピッチでした。受賞できたことは誠に光栄です。とにかく持続可能な介護の未来を構築したい一心でここまで来ました。受賞の喜びを社会実装に向けた力に変えて気を引き締めてスタートしで参ります。

この日を迎えるまで数えきれない人たちのサポートと、ご尽力をいただきました。

心より御礼申し上げます。
ChatGPT
深刻な介護問題に対する革新的な解決策を提案する弊社のミッションは、家族主導で進める遠隔介護マネジメントプラン「ファミリーケアナビ」によって、介護を必要とするすべての人が尊厳を持って自宅で生活できる未来を目指しています。介護の経験と現場の課題に直面し、これらに対応するために立ち上げたこのプロジェクトは、2024年のI'meビジネスコンテストで最終審査に進出し、私たちのビジョンと実行計画を広く伝える機会を得ました。社会全体で介護に対する認識を変え、全ての人が自立した尊厳ある生活を送れる社会を実現するため、私たちはこの挑戦を続けていきます。

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