要介護5・電動車椅子生活20年以上——株式会社エルギ代表・ケアシフト®提唱者の西本理恵です。今日は、一人暮らしの親に認知症の症状が出てきたとき、離れて暮らす家族がどう遠隔介護の体制を組めばいいか、その順番についてお伝えします。
「最近、母の様子がおかしい」
夜中に家を出てしまう。時間の感覚がなくなっている。近所の方やケアマネジャーからそう聞いた瞬間、頭が真っ白になった——という経験、ありませんか。
離れて暮らしていると、何から手をつければいいのか分からず、不安だけが膨らんでいきます。「今すぐ駆けつけられない自分」を責めてしまう方も多いはずです。
でも、順番さえ間違えなければ、遠隔介護は十分に可能です。少し形は違いますが私自身、認知症だった母と同じ家に住んでいても、自分の身体(要介護5)では直接手を貸すことも、こまめに様子を見て回ることもできませんでした。だからこそ、必要な対策を整理して、実際に介護に携わっている方と共有する——そのやり方で10年以上母を支えてきました。
遠隔介護が「不安すぎる」と感じる本当の理由
一人暮らしの親に認知症の症状が出てくると、家族の不安は一気に膨らみます。理由は大きく3つあると感じています。
情報が自分のところに集まってこないこと
本人と話しても状況がつかめず、近所の方やケアマネジャーからの断片的な情報だけが頼りになる。全体像が見えないまま、最悪の想像だけが膨らんでいきます。
誰に相談すればいいのか分からないこと
病院なのか、市役所なのか、警察なのか。窓口が分からないまま時間だけが過ぎ、症状が進んでから慌てて動くことになりがちです。
「今すぐ駆けつけられない」という罪悪感
遠隔介護をしていると、この罪悪感が一番心をすり減らします。でも、駆けつけられないことと、何もできないことは、まったく別の話です。
遠隔介護を「安心」に変える、相談と見守りの順番
私がコンサルでお伝えしてきたのは、次の順番です。
担当の地域包括支援センターへ緊急相談 → 医療機関での状態確認 → 見守りネットワークへの事前登録 → 玄関センサーとGPSの設置 → 夜間に駆けつける人・サービスの確保
まず地域包括支援センターに「緊急性を明確にして」相談する
地域包括支援センターは、高齢者本人だけでなく家族や地域住民からも相談を受け、介護・認知症・医療・権利擁護・サービス調整までを担う、高齢者の総合相談窓口です。
電話をするときは、「認知症の相談です」だけで終わらせず、次のような具体的な情報を添えてください。
- 症状が出た日時と回数
- そのときどう対応できたか(誰が発見したか、家に帰れたか)
- 道に迷ったこと、火の消し忘れ、服薬間違いなどの有無
- 家族が駆けつけるまでにかかる時間
「一人暮らしを続けられる状態かを含め、早急に自宅訪問と支援会議をお願いしたい」——ここまで具体的に伝えることで、対応の優先度が変わってきます。
自治体の「見守りネットワーク」に事前登録する
多くの自治体には、認知症などで道に迷うおそれのある人をあらかじめ登録し、行方不明になった際に警察・地域包括支援センター・協力機関が連携して捜索してくれる仕組みがあります(広島市では「認知症高齢者等SOSネットワーク」という名称です)。
本人の顔写真や身長、よく着る服、立ち寄り先などを事前登録できるので、家族が地域包括支援センターや区役所で早めに手続きしておくことをお勧めします。衣服や持ち物に貼る見守りシールを併用できる自治体もあります。
行方が分からなくなったときは、夜中でも「少し待てば帰るかもしれない」と待たず、すぐ110番。警察には「認知症があり、時間と場所の感覚を失っている」と具体的に伝えてください。

認知症の親を介護マネジメントで守る。。直接介護をしなくても適切な順番で見守りチームを組んで介護
駆けつけ体制は「センサー→通知→カメラ→現地対応者」の順で組む
見守り機器を選ぶとき、カメラだけを先に導入する方が多いのです。しかし、家族が映像を見ていない時間に外出してしまえば意味がありません。
優先順位は、玄関の開閉センサーで通知を受け取り、カメラで状況を確認し、現地対応者につなぐ、という順番です。
スマートフォンを持ち忘れる方には、靴やバッグ、上着など、本人が必ず身につける物にGPS端末を取り付けます。GPSは「外出を止める機械」ではなく「早く見つけるための補助」だと考えておくと気持ちが楽になります。
「誰が駆けつけるか」を先に決めておく
通知が来ても、遠方の家族が到着するまでには時間がかかります。連絡順位をあらかじめ決めておくと、いざというときに迷いません。
- 近くに住む家族
- 信頼できる近隣住民や民生委員
- 契約している訪問介護・定期巡回サービス
- 地域包括支援センター
- 行方不明なら警察、けがや急病なら救急
実は私にも、これと似た経験があります。父が脳梗塞で倒れたとき、私はまだ東京にいて、教えてくれたのは近所の方からの一本の電話でした。それ以来、母と同居しながらも、自分では直接介護ができない分、介護事業所約10社・ヘルパー約20名との連携を、スマホとメールで采配してきました。「今日は誰が行くのか」「何かあったら誰にまず連絡が来るのか」——それを先に決めておくだけで、不安の質はまったく変わります。
夜間の外出が繰り返され、通知が来ても誰も駆けつけられない状態が続くなら、一人暮らしの継続自体を見直す必要も出てきます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模多機能型居宅介護、認知症対応型デイサービスの利用、ケアマネジャーへの区分変更申請の相談なども、早めに選択肢に入れておくと安心です。
今日から遠隔介護の不安を減らすための一歩
もし今、離れて暮らす親の認知症に不安を感じているなら、まずこれだけやってみてください。
地域包括支援センターに、症状の具体的なエピソードを添えて電話をかけること。
「こんなこと聞いていいの?」と思うようなことも、全部話していい場所です。介護保険制度の基本については、こちらの記事も参考にしてください。
→ 介護保険制度をわかりやすく解説|対象・保険料・いつから?
書類やケアマネジャーとのやり取りの整理については、こちらも参考になるはずです。
→ 認知症の親を介護してわかったこと——書類管理とAIで孤独と戦う方法
遠隔介護は、機械やサービスだけでは成立しません。センサーで気づく仕組み、現地で動ける人、公的なサービス、警察との事前連携
——それを一つのチームにしておくことが、離れて暮らす家族にできる一番の備えです。
まず一つだけ、今日できることを探してみてください。
人生を自分で開いていく——その主体性を、どうか手放さないでください。
→ ファミリーケアナビ トップ
この記事を書いた人
西本理恵:ケアシフト®提唱者。元国際線CA・要介護5・株式会社エルギ代表。介護・身体・時間の制約を、AIとPRで「できる形」に変える。仕事と介護を両立し、人生を手放さないための「ケアシフト®」を提唱している。ウェルビーイングPRプロデューサーとして、Hiroshima Bloom Together(赤色でつながる広島・バリアフリー推進)にも取り組んでいる。