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電動車いすで海外旅行 5 沖止め搭乗

ソウルに向け出発する際、ボーディングブリッジが使えない沖止めだった。飛行機にどうやって乗ればいいの? [電動車いす海外旅行]の続きです。何かヒントになって「行ってみよう」と旅の計画の一助になれば嬉しいです。

ボーディングブリッジがない

私がいちばん避けたいことが「沖止め」ボーディング。これまでもソウルで一度、またナナさんと行った釜山とあわせて二度経験したことがあった。その時、
「もう飛行機には乗りたくない!」
と思ったほど緊張したのだが、その沖止め搭乗に今回も当たってしまった。それを予期したわけじゃないが、元CAのナナさんが偶然居合わせていることが心強く、救いとなった。

沖止め・オープンスポットとは、建物から伸びるボーディングブリッジがなく、飛行機が駐機していて、階段のタラップで乗客は飛行機の中に入っていくこと。通常は空港のターミナルの建物から蛇腹のような筒状のゲートが飛行機の出入り口に伸びて、乗客は暴風雨に当たらず航空機の左側前のドアから入る(エアバス321の場合。)

 

沖止めという言葉は、業界や飛行機好きマイラー言葉で世間一般では使わないかもしれない。航空会社のカウンターでは、一般的に
「バスでのご案内」とか
「タラップからの搭乗」という案内になると思う。 

一般の乗客でも、真夏や雨、雪など天候次第では、いやだなあと思う人もいて当然だ。ましてや急いでいる乗客なら、到着してバスに乗る時間さえも長く感じて損した気分になるかも。

一方、格安航空会社は、食事やボーディーングブリッジの使用料など節約することで「安い航空券」を販売する。そこがセールスポイントだから乗客はブツブツ文句は言えない。

身体が不自由で階段を上がれない人、車いす利用者には、当日「沖止め」を言われると、ガクッとくる嫌な搭乗方法なのだ。

その理由は、多くの空港スタッフに時間とご足労をおかけするのが申し訳ないのと、そう思って身と心を恐縮させる自分を見たくないからだと思う。

しかし、沖止めを歓迎する人も中にはいる。マイラーや航空機マニアが近くから機体やタイヤ・エンジンを見上げると、滅多にない機会にエキサイトするんじゃないかな。私も肢体不自由じゃなければ「ヮオーでっかい」と興奮するタイプだと思う。

今回、私たちが乗るアシアナ航空ソウル行きは、福岡空港では外国のエアラインであり、何か事情があったのだろうか?と気になった。
直ぐに思いついたことは、二〇十九年の日韓関係の悪化。
韓国からの訪日旅客激減で赤字経営ゆえ、ボーディングブリッジ使用料の節約なのかな?とか。※他韓国企業に買収された
とにかくゲートが使えないことがわかって、楽しみで緩んだ心と身体は一気に失意のどん底に突き落とされた。

ソウル旅行
電動車いすで海外旅行 4 チェックイン

ソウルに向け出発する際、ボーディングブリッジが使えない沖止めだった。飛行機にどうやって乗ればいいの? [電動車いす海外旅行]の続きです。何かヒントになって「行ってみよう」と旅の計画の一助になれば嬉しい ...

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【集合時間に遅れる】

 

スタッフから午後三時出発の便なので、一般旅客の搭乗時間の十分前に出発ゲートに来てくださいと言われた。 つまり二時二十分までということだった。
私たちはセキュリティーを通って出国手続きも終え、ターミナルの端にある出発ゲートに向かったが、小走りで行ったにもかかわらず、行けども行けども出発ゲートナンバー表示が見つからない。
ビジネスクラスのラウンジで、のんびりと過ごすどころか、ラウンジ利用の事などすっかり忘れていた。

私は電動車いすの走行スピードを速い方に切り替えた。一緒にいるヘルパーさんは風邪が治ったばかりで、小走りになるから速度を上げ過ぎないよう気を付けた。
「慌てる時こそ冷静にならなくちゃ」
と、自分に言い聞かせ、運転しながら、これから先の搭乗までの流れを思い描く。


沖止めということは一階だわ・・・
エレベーターで一階に降りるということだわ。
身障者お手洗いが搭乗口近くにないかも?と気がついた。


私は、いざという時のために紙オムツをしていたが、やはり抵抗があり、できないし、したくない。だから搭乗前に絶対にお手洗いに行きたかった。
電動車いすの走行を止め、ヘルパーのユリさんに
「お手洗いに行っておきたい!」
と、いきなり大声で呼び止めた。
それまで私とユリヘルパ―は、搭乗口へ時間厳守で行くことだけを考えていた。

今、大事なことを伝えておこうと思ったのだ。介護ヘルプを受ける側も、何事にも我慢は良くないと思う。

ヘルパーさんよりも航空機や空港施設の利用の流れは自分の方が良く知っていること、また機内でトイレに行けない不安を取り除いておくことが「楽しい旅」につながると確信しているからだ。
結局、車椅子マーク標識があるところまで戻って、いつもの三倍のスピードで用を済ませた。

 

ゲートまで行くと、今か今かと搭乗開始を待っている乗客の列と、多くのスタッフが一斉に私たちを見る姿が目に飛び込んできた。とっさに「すみません」と謝る。五分遅れてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

私たちより後にセキュリティを通過したナナさんも既に到着していて、小声で
「一般の人が自分たちが案内されると思って列ができちゃったのよ」
と状況を説明してくれた。お手洗いの時間を差し引いても、なぜ時間がなかったのか・・・

すぐに私たちは航空機に食事カートを搭載するような特殊な車に乗るよう案内された。それは牛でも乗れそうな柵つきリフトで、大きなトラックに乗る感じだ。
リフトアップされ、通常入る左側のドアではなく、反対側の機内食カートや免税物品カート、枕や毛布搭載のサーヴィスドアから機内に搭乗させていただくことになった。

いつもは空いていない右側の最前列の非常口ドアを開けるには、アシアナ航空だけでなく、空港関連会社の方々の連携も必要になる。

危険リスクが上がるドア開閉

航空機のドアを開けると、緊急脱出シュートが作動するため、乗務員が内側ドアから操作を確認し、外側からも窓越しに指合図で確認した後ドアを開けるとか、落下危険もあるため緊張が高まる。


世界の空港で、ドアモード誤操作で事故や出発遅延が時々起こっている。車椅子を利用する私のために、リスクがある搭乗となった裏事情も理解できるので、本当にありがたかった。

リフトで飛行機のドアの高さまで上がると、搭乗予定便の右側非常口はすでに開いていた。さほど大きくないエアバス機の前方ドアは両方とも開いて遠くの景色が見えた。
ブラウンの制服を着たアシアナ航空の乗員たちが私達を見ながら待っていた。(早く搭乗して〜と思っていたはず)


リフト車のドライバーが、ドアと段差が生じないよう何度か高さ調整をした後、ピタッと接続。その操作を私たちもジーッと見ていたが、プロの仕事人の技を見た!思いで感動した。

それなのに・・・私といったら・・・
機内用のアイルチェアを乗員から受け取り、さあ私の電動車いすから乗り移ろう!という段になって、私は駄々っ子のように叫んだ。

「アイルチェアと機内座席に置くエアクッションがない!」
「無いと乗れない~(泣)」
「エアクッションが要る!!!」

お尻の下に敷くクッションを膨らませていなかった。
いつもなら搭乗前に時間の余裕があり、エアクッションも準備して、むしろ早く搭乗させて欲しいとゲートで交渉してきたのに。二年ぶりの訪韓で手順を忘れてしまったようだ。

遅れ気味だった搭乗中に、さらに遅延ハプニングとなると、さすがに
「クッション無くてはダメ?」
といった空気を感じたが、私は頑として譲歩できなかった。それには車椅子利用者ならではの訳があった。

お尻に筋肉がない車椅子利用者は、褥瘡などができやすい。肉や脂肪がない臀部は弱く、上半身の重さを骨盤の底部で支えるので、座面が硬いと数分すれば発狂ものだ。

痩せるとお尻が痛いことを、私自身が体験するまでわからなかった。高齢者介護も同じで、この点を理解しジェルやエアクッションなど敷くだけで苦痛から解放され、長く座っていられる。そうすると嚥下筋力もつき、良いことだらけなのに、現在の医療や介護現場では、「拷問」座りが見過ごされていると思う。


もし身近な人が入院や施設で車椅子利用なら、『ヨックッション』や〇い穴が開いたエアクッションをお見舞い品にして差し上げてほしい。

機内用のアイルチェアは、航空機内に折りたたんで収納されている。しかし、お尻がはみ出るほど小さく、乗っても痛い作りなのだ。機内通路をギリギリ通るサイズなのだから仕方ない。

私の「クッションお願い」は、ヘルパーさんが全力でフフッーと満たしてくださったおかげで叶えられた。

機内座席への入り方
小さなアイルチェアに乗って、機内へは後方から押してもらって前進で入り、ギャレー(台所)で方向転換して後ろ向きで狭い通路を後方へバックする。

エアバス三二一便の通路は、アイルチェアが通るのがやっとの幅だし、動きが悪いため介護者の負担は大きい。

ビジネスクラスは二席、通路、二席と、通路を挟んで両方に二席配置されている。

私の機内での着席は、通路にアイルチェアーを三席続く感じでならべ、介護者が後方と前方から抱えて、先ずアームレストの上、次に座席へと平行移動させてもらう方法だ。

立位が大丈夫な人は、機内通路にアイルチェアで普通に入って行けば良いだろう。立位ができても介助が要るなら、介助者はどこに立っているか、事前に考えないと狭いスペースでは身動きとれなくなる。

 

 

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